矯正治療に使われる装置は、それぞれの歯の位置関係を治すマルチブラケット装置が基本になります。

 

以前はブラケット装置といえば、歯の表側に直接一つ一つ貼り付ける金属製のブラケットしかありませんでした。金属ブラケットは見栄えの悪い装置なので、敬遠する方も少なくありません。笑ったときなどにブラケットが見えてしまうのは、特に女性には嫌われます。しかし現実では、透明なプラスチックやセラミック製の素材があります。ワイヤーも以前に比べてずっと細くなりましたし、ワイヤーのかわりに透明なマウスピースを使う方法もあります。

 

プラスチックブラケットは、見た目の悪さは改善されていますが、噛み合わせによってすり減ったり、ワイヤーの力に負けてしまう場合があります。

 

セラミックスブラケットは、半透明で歯の色に近いので見た目にもとてもきれいです。ただ、歯よりも硬い素材なので、ブラケットを外すときなどに歯のエナメル質が壊れてしまうこともあるという欠点があります。また、金属ブラケットに比べて溝が磨耗しやすく、歯を動かすのに多少時間がかかることもあります。

 

もっとも目立たない矯正は舌側矯正(あるいは裏側矯正)と呼ばれる方法です。「リンガルブラケット」という歯の裏側(舌側)から装着するブラケット装置を使います。ワイヤーなどにさまざまなタイプがあります。リンガルブラケットは表側からはまったく見えないので、口を開けても他の人に気づかれる心配はありません。また、表側に装置を付ける方法よりも、虫歯になりにくいともいわれています。ですが、慣れないうちは舌に当たってしゃべりにくいので発音障害が起こりやすく、装置が歯に当たりやすく噛みにくいことです。表側からの矯正より治療期間が長くかかることが多いですし、治療費は高額になります。

 

リンガルブラケットは日本やヨーロッパで普及していますが、アメリカではあまり使われません。その理由は、アメリカでは歯列矯正が一種のステイタスになっているため、「目立たない矯正装置を・・・。」という発想はほとんどないからです。

 

さらに、このリンガルブラケットとは違う発想で、患者さんの要望に応えた「クリアライナー」という矯正装置が脚光を浴びています。どちらかというと、セラミックスブラケットの発想に近いのですが、透明なラミネートで作成されたマウスピース型の装置だとお考えいただけるとわかりやすいでしょう。

 

クリアライナーのメリットは透明であるためほとんど目立たないこと、ラミネート製のために歯を傷つける心配が少ないこと、取り外しが簡単なために食事時にも便利で会話時の支障も最小限であることがあげられます。一歯または複数歯の移動まで幅広いケースに対応できるため、最先端のテクノロジーに敏感な歯科医から矯正装置や保定装置として期待されています。

 

 

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