知覚過敏について
みなさんこんにちは。歯科医師の大森です。
今回は、冷たいものを食べたり飲んだりするとなぜ歯が染みたりするのかその関係についてお話しします。
よく歯磨き粉のCMなどで知覚過敏という単語を聞くと思います。
知覚過敏とは正確には象牙質知覚過敏症と言います。みなさん体験したことがあると思いますが、冷たいものを飲んだり食べたり、歯ブラシの刺激で瞬間的に痛みを感じることを象牙質知覚過敏症といいます。
なぜ虫歯でもないのに冷たい風や飲み物、アイスを食べたり、歯を磨いている時に歯がキーンとしみるのでしょうか。
まず歯の表面にはエナメル質と言って歯の一番外側を覆っている、人間の体の中でも最も硬い組織ハイドロキシアパタイトが表面を覆っています。
そしてエナメル質の内側には7割がハイドロキシアパタイトで3割がコラーゲンで構成されている象牙質という組織があります。象牙質は柔らかくて弾力があります。
そのさらに象牙質の内側に象牙質に栄養を与えている歯髄という組織があります。また歯髄は神経が通っており痛覚をつかさどります。歯に加わる刺激は全て痛みとして翻訳します。
虫歯になった時にズキズキしたような痛みを生じるのは虫歯が出す酸が歯髄(神経)近くまで溶かして刺激を与えているために起きます。
では虫歯でもないのに染みるようなキーンとした痛み、知覚過敏はどこからきているのかと言いますと、象牙質という組織は細管構造という細い管のような構造をしています。この細い管を通じて歯髄へ刺激を伝えています。(象牙質と歯髄がセットで動くことを象牙質歯髄複合体と言います。)
知覚過敏の原因として最も有力と言われているのが、動水力学説です。これは露出した象牙質に刺激が加わると象牙細管内の組織液の流れが急激に変化し歯髄まで伝えることで鋭い痛み、染みる感覚が生じることです。
つまり象牙質が露出してしまうことで外部からの刺激が象牙細管を通じて歯髄に伝わり、瞬間的に鋭い痛みを生じてしまうという流れになっています。
ではどういった時に象牙質が露出するのでしょうか。
主な原因としては、
- 歯ぎしりや食いしばりなどの過度なかみ合わせで歯に強い力が加わり歯が破折する、歯と歯茎の境目付近が欠け象牙質が露出する。
- 歯磨きの圧が強かったり硬い毛の歯ブラシを使って歯を磨くことで歯茎が傷つき、長期的になると歯茎が下がり象牙質が露出する。
- 歯周病により歯茎が下がり歯の根が露出し象牙質も露出する。
- 虫歯治療により歯を削り一時的に歯の神経が敏感になり痛みを感じやすくなっている。
- ホワイトニングで使用する薬剤の影響で一時的に歯が染みる。
- 加齢により歯茎が下がり象牙質が露出する。
- コーラやみかんなどの酸性の食べ物、飲み物を毎日摂取することで歯が溶け、象牙質が露出する。