こんにちは。えんどう歯科ドクターの梅原です。
虫歯予防に関心を持ったことがある人なら、一度は「虫歯予防にはフッ素がいい」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。実際、子どもの虫歯予防のために歯科医院や保健所ではフッ素塗布が行われていますし、歯磨き粉のCMでも多くが虫歯予防効果のある「フッ素入り」であることをうたっています。
しかし、そもそもフッ素とは何なのか、どう虫歯の予防に役立つのか、どれぐらいの効果があるのかになるとよく分からず、何となくフッ素入り歯磨き粉を使っているという方が大半ではないかと思います。
フッ素について知ることは、賢い虫歯予防にもつながります。そこで、ここではフッ素の性質や効果、上手な使い方について説明していきます。
フッ素とは、水素やナトリウムなどと同じ元素の1つ。他の物質と非常に反応しやすいという性質があり、フッ化物(フッ素と他の元素又は原子団が結びついてできた物質)は自然界に広く存在しています。自然の海水中にも1.3ppm(*ppmは100万分の1割合を表す単位)、土には280ppmのフッ素が含まれており、普段私たちが食べている魚介類や野菜、水、調味料などもすべて少量のフッ素を含んでいます。つまり、何も特別なものではなく、私たちの身の回りにありふれた物質だということです。
フッ化物については、20世紀の始めに歯への影響が発見されて以来、さまざまな研究が進められてきました。1999年に日本歯科医師学会が発表した「フッ化物応用についての総合的な見解」は、フッ化物には次のような効果があるとしています。
このように虫歯予防に役立つフッ化物ですが、ほかの多くの薬と同じように、必ずしも良いことばかりではありません。摂りすぎると体に悪影響を与える場合があります。
その1つが、一度に多量のフッ素を取り込んだ場合に起きる下痢、嘔吐、呼吸困難などの中毒症状です。子どもが誤ってフッ素入り歯磨き粉などを食べてしまった場合が考えられますが、フッ素の摂取危険量は体重1kgあたり75mgなので、仮に1歳半ぐらいで体重10kgと仮定すると750mgになります。市販の一般的な歯磨き粉は内容量120g、フッ素濃度は高くても950ppm程度であり、フッ素の量は114mgなので、もしまるまる1本分食べてしまっても危険量に達するわけではありません。
また、もう1つの症状として子どもが数年間という長期間にわたり過剰にフッ素を摂取し続けた場合、永久歯に斑模様ができてしまう場合があります。ただし、水道水にフッ素を添加するのが一般的ではない日本では過剰摂取になることはほとんどなく、あまり気にする必要はないとされています。
フッ素を使った虫歯予防は、日本では大きく分けてフッ化物を溶かした水でのブクブクうがい、フッ化物が入った歯磨き粉の使用、歯科医院でのフッ素塗布の3つの方法があります。全部を使ってみるのもいいですが、歯の質や口の中の環境は1人ひとり違うので、手厚い予防が必要な人もいればそこまで必要ではない人もいますし、虫歯になりやすい子どもにも配慮が必要です。 一度歯科医院を訪れて、自分にあったフッ素の使い方を相談してみるとよいでしょう。
上の写真は当院で扱っている歯面塗布用のフッ素です。
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