口を開閉するときに耳の前で、カクッという音や砂利を踏むような耳障りな音が聞こえる人は、「顎関節症」という病気の可能性があります。近年では全人口の6~7割の人が顎関節症のなんらかの症状を持っているといわれており、潜在的な患者さんはとても増えているようです。

 

顎関節症の原因は様々ですが、最も多いのは下あごを動かす筋肉の異常です。もともとこのあごの関節が弱かったり、噛み合わせが悪いことで起こる人がほとんどです。あごに過剰な力がかかって、下あごの位置が上方や後方にずれてくることで起こるのです。また、奥歯が欠損している場合も多く、物を噛むときに下あごが後ろにずれるために、その状態が続くとあごの関節にかかる力のバランスが乱れて痛みなどが出ます。こういうケースではブリッジ、義歯、インプラントなどを入れることで治る場合があります。

 

顎関節症の治療で一般に行われるのは「スプリント療法」です。スプリントと呼ばれるマウスピース装置を入れることで、顎関節症の症状がよくなります。スプリント装着の目的は、筋肉をリラックスさせると共に、睡眠時の歯軋りや食いしばり(プラキシズムといいます)を軽くすることです。

 

その他、やわらかい食事にする、食いしばりをしないよう頭をリラックスさせる、大きな口を開けない、温湿布をする、筋肉のマッサージをする、よい姿勢を保つ、仰向けか横向きで寝る、などのセルフケアが大切です。症状によっては、歯科医の指示に従って開口練習をする必要がありますし、薬物治療が行われることもあります。またあごの外からチューブを入れてあごの関節を洗う方法や飲み薬を使用する方法など、その状態によって様々な治療方法があります。さらに最近では、レーザーによる治療も行われています。